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WL 外貨決済と外貨送金について(2008)

2018-03-02
 「毎月50万の経費が必要なのに、香港地区から30万しか入金できないのはなぜでしょうか?」「会社には2000万の資金があるのに、なぜ海外へ正規に送金できないのでしょうか?」「外貨決済における入金金額は大体経費に充当しており、転廠によるサプライヤーへの未払額が大きい!」
 
 皆様の身近でも、こんな話を耳にすることがあると思いますが、このような悩みに直面しても、原因がよくわからないのではないかと思います。これらの問題は、中国の外貨決済制度、加工貿易の通関制度、地域別の特殊性が複雑に絡んできますので、これから3回に分けて、中国関連制度とその実務をご説明させていただきます。
 
 
 
 中国では外貨管制を行っており、人民元しか流通できないことから、外貨取引の支払いを人民元両替する必要があります。一般的に、このようなやり取りは外貨決済といわれています。外貨決済は、貿易取引と貿易外取引の二種類に分類されます。貿易取引をする場合、決済可能は金額は基本的に通関上の金額がベースとなります。いわゆる報関単(通関書類)に記載の金額のことです。貿易取引だと契約ベースでの支払いになり、原則として個別認可です。
 
 貿易取引におていは、決済方法は輸出金額と輸入金額をそれぞれ決済する「全額核銷」という方法と、輸出金額と輸入金額の差額で決済する「差額核銷」の方法があります。
 
全額核銷:輸出決済と輸入決済が含まれ、輸出に対する売掛金回収は、「輸出入金核銷」と称し、輸入に対する買掛金支払は「輸入送金核銷」と称します。
 
差額核銷:進料加工に従事する企業の外貨決済コスト削減を目的として、国家外貨管理局は輸出売掛金と輸入買掛金を相殺して、差額分のみ中国へ振り込むことを認めています。このような優遇措置は「差額決済」と呼ばれます。ただし、この方法は進料加工にしか適用されません。
 
 
 
 差額決済の場合、外貨決済の計算式が地域によって異なっています。差額決済において、地方政府は一定の利益を地元に残したいとの思惑から、通関手冊に一定程度の増値率を守ってもらうよう、合同手冊に登録されている金額(増値率)を参考にしている地域もあります。つまり、差額決済では報関単価格を採用したり、手冊価格を採用したりと、統一されていないのが実態です。同じ広東省のシンセン市や東莞市、あるいは同じ東莞市であっても、会社が違えば、額の算出方法も異なっています。
 
 具体的には、輸入・輸出とも原則として報関単(通関書類)価格であるべきですが、シンセン市では報関単(通関書類)に基づく外貨決済を行っています。また東莞市での輸入金額の基準は、報関単(通関書類)価格と合同手冊価格のいずれか低い方を輸入金額とし、輸出金額の基準は、報関単(通関書類)価格と合同手冊価格のいずれか高い方を輸出金額の基準としています。そうした場合、差額決済を採り入れている会社では、最初通関手冊を申請した際に、あくまでも予測価格に基づき税関へ申告しているため、実際取引価格とは多少のズレが生じるのは当然ながら、上記のやり方での外貨決済が、会計帳簿上の売掛金と買掛金が合わなくなる原因のひとつだといえるでしょう。