B社は、日本本社の全額出資による中国の現地法人。印刷機の組み立てに従事している会社です。印刷機を最終ユーザに販売後、修理部品の需要もあります。B社の日本本社は、日本に物流アフターサービスセンターを設置し、それぞれの部品メーカーから必要な部品を日本に集め、世界各地の販売店に輸送しています。B社は数量が少ない、時間がない等の理由で、船便を使わず、ドア・ツー・ドアの国際宅配便を使って日本へ部品を発送するケースも多々あります。 ある日、日本本社からB社の生産管理担当者に、国際宅配便で届いた金属部品が変形し、不良になったとのクレームが入りました。そのため、担当者が日本の物流アフターサービスセンターに改善対策を提出し、良品を再発送することになりました。しかしながら、その後、変形・破損等が何度も何度も繰り返し、梱包にいろいろと工夫をしても、不良品となってしまうのでした。
B社は原因を追究するために、中国の発送時の外装から包装内部の荷姿まで、すべての写真を撮影することにしました。そして、日本の物流アフターサービスセンター到着後も同じように撮影する
ことにしたのです。 一週間後、日本から送られた写真を照らし合わせてみて驚きました。中国で梱包した姿とまったく違う形になっていたのです。箱内の区切りが短くなったり、緩衝材が少なくなったり、はたまた外装箱も小さくされる等、ありとあらゆる変化が見られました。運送途中に何者かによって荷姿が変えられてしまったようです。
いったい原因は?運送業者の”欲深さ“
いったいなぜ、梱包状況が変わってしまったのでしょうか。目的は何なのでしょうか。 当時の中国は、外資企業における運送業がまだ解放されていませんでした。国際宅配便の場合は、まず中国国内の運送業者から香港まで運送し、香港から正式な国際運送会社の届け物にして、自社のネットワークにより他社へ送る事になっていました。運送業者からの見積もりは「日本まで」となっていましたが、実際には「香港まで+香港から日本まで」の二つに分けられていたのです。 皆様もご存知だとは思いますが、国際宅配便の運賃は重さとサイズにより計算されます。調査によると、中国の運送業者はB社の工場内で重さやサイズを測って運賃を計算していましたが、より軽くてより小さい荷物を香港の国際運送会社に送るために、運送業者が勝手に梱包状況を変えていたのです。
言うまでもなく、彼らは暴利を獲得することができました。 このようなことは、運送業者以外の人ならば想像がつきません。B社は調査結果にもとづいて裁判所に損害賠償請求を申し立てましたが、証拠不十分のため、運送業者は如何なる責任も負わずに済みました。 その後、B社は運送業者を変えることで、同じようなトラブルに見舞われることはなくなりました。
現在は、国際運送会社の中国現地法人の設立もでき、国内運送業者のサービス自体も遥かに改善されています。しかし、ひと昔前までは、このような苦労も多々あったということを、ご参考までにお話させていただきました。