納品数を納品重量に転換
電子製品の組み立てをしているA社は、製品梱包用の段ボール箱をB社から調達していました。つまり、両社は同じ東莞市にあるため、「転廠取引」をしていたのです。B社は生産した段ボール箱を直接A社へ納品し、A社とB社の間で定期的に税関で「転廠輸出入」手続きをしていました。 国内での製品引渡しの取引きですが、この手続きにより、輸入増値税、関税が免税される保税取り扱いになります。税関はB社の納品数については「輸出」と見なし、A社の受け入れは「輸入」として認めます。 A社は電子製品を生産しているため、製品を輸出する際、「台」単位で税関へ申告。段ボール箱は梱包材ですので、当然一台の製品には段ボール箱1個使います。 ところが、税関は段ボール箱1個で管理するのは非常に難しいため、重さで管理していました。そうなると、B社の段ボール箱をA社へ転廠手続きする時には、重さで申告することになります。 そのため、A社の通関手冊には「1台の製品に対し、何キログラムの段ボール箱を使ったか」という登録になります。双方の転廠も、「納品数×単重量」の計算で納品数を納品の重さに転換し、手続きをしていたのです。
事件発生と発生原因
ある日、B社の管轄税関から税関役員がやって来ました。B社との転廠取引伝票、支払伝票の提出を要求され、調査が始まりました。 一方、B社の定例税関監査より、転廠管理に不備があることが判明。結局、両社間の転廠申告数と実際申告数が合わず、税関からA社へ懲戒警告がなされ、期限内に転廠申告数を訂正することになりました。 なぜ、転廠数が合わないのでしょうか。よくよく調べてみたところ、やはり通関日常管理に問題がありました。それぞれの段ボール箱の単重量を正しく測っていないことが判明したのです。 A社はB社が設定した単重量をそのまま使って手冊に登録していました。ところが今回、税関がA社の工場で実際の包装箱の重量をチェックしたところ、B社で提供した単重量よりも軽い事実が判明しました。即ち、手冊登録単損耗(1台当たりの使用量)が正しくないことになります。 また、毎月の納品数にもとづき転廠数を計算しますが、その時にもB社が提供した単重量で計算していたため、転廠された重量は当然、税関が工場で実際測った単重量で計算すると、累計差が大きくなってしまいます。このように、段ボール箱やその他の梱包材は、企業にとってメイン部品ではないため、管理がいい加減になっていることが多々あるのです。
今回の事件に関しては、A社とB社は常に取引きしているので、転廠差異は税関に発見された後、すぐに手続きを含めて修正することができました。そのため、懲戒警告で済んだのです。 しかしながら、これが仮に取引きが既に切れている会社どうしであれば、修正することができず、完全に違法と見られてしまいます。結果、関税や増値税の追徴及び罰金が科せられることになります。 日常の管理の中で、皆様も保税扱いの範囲をよく認識する必要があることが、ご理解いただけましたでしょうか。免税・減税輸入設備を勝手に破棄処理したり、金型を勝手に改造したり、あるいは外へ移管したり等、様々なことに気を付けることが大事なのです。