設立手続きの完了が独資化の完了ではない
独資化とは、独資企業を新たに設立することだけではありません。
現在、数多くの来料加工廠が独資化に向けて作業を開始しています。お客様を訪問した際に、よく「もう弊社は独資にしましたよ」と言われます。ただ、お話をうかがってみると、「独資企業の設立手続きを完了しました。手続きは代行会社に任せました」とおっしゃいます。
このように、独資企業を新たに設立する手続きを完了しただけで「独資化が完了した」と勘違いしている企業様が少なくありません。このような企業様のなかには、トラブルがすでに発生しているところもあります。
最近、ある企業が設立手続きを代行会社に任せていたところ、来料加工廠の手冊を閉める際に、税関より180万元の税金を課されたということを聞きました。おそらく来料加工廠の手冊核ショウ手続き段階で発生した税関問題と思われます。しかも、さらに同社が次の段階の来料加工廠の閉鎖手続きをする際にも、きっと税務局からまた何か言われる可能性が高いでしょう。要するに、手続きだけ済ませて最後のところで問題を解決しようとしても、簡単には済ませられないことになります。
独資化とは何か
現在、独資化しようとしている来料加工廠は、香港側から工場運営に必要最小限の加工費をもらい、物造りのみに専念してきた工場です。このような会社が独資として運営を始めますと、今までどおりの業務形態を続けることはできず、いろいろ問題が発生します。
第一の問題は、関連企業との業務形態をいかに変革していくか。第二の問題は、今まで来料加工廠の運営に慣れてきた社長以下全社員が、それぞれの日常業務がどのように変わるかを正確に認識し、独資としての業務プロセスを確立しなければならないこと。第三の問題は、独資企業を運営し、来料加工廠を閉鎖するまでの併行期にすべての作業内容が明確化されないと、日常業務に混乱をきたし、結局、独資の運営が正常になされず、経営に不利な影響を及ぼすということです。そして最後の問題は、来料加工廠をスムーズに閉鎖するということです。
独資化とは、独資企業の設立手続きだけではなく、企業経営のすべてと、企業の運営に関わるすべての人が、来料加工廠から独資へ「華麗な変身」をするということです。さもないと、税金追徴、罰金、生産停止、スケジュール遅延等の大きな問題が生じ、時間とお金が流失することになります。
このような事態を防ぐためにも、企業は事前調査段階にて従来の運営現状を把握し、独資化への綿密な計画を立て、独資企業を設立することが必要です。来料加工廠のすべての資産を香港側、来料側、独資側三者に一番有利な方法で移管し、独資の運営準備事項を明確にしたうえで計画を推進していきます。そして、最後の段階で来料加工廠の閉鎖手続きに伴う資金対策、労務対策、税務対策を行ない、閉鎖手続きを終わります。
独資化で注意する点
独資化を順調に進めるためには、いくつかの注意点があります。字数の制限で全て説明できませんが、ポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。
①コンサルタントを選ぶには「実務経験」と「工場内部業務指導力」を注視すべき
②コンサルティング会社が推進チームを結成するのに対応し、自社内でも推進チームを作り、総経理と工場長がチームリーダーとなって推進すべき
③すべてのプロセスを再検討する
④商流変更に伴い発生するお客様、仕入れ先に対する取引形態の変更、独資企業として新たに発生する外貨、税務問題を重視しなければならない
⑤人材対策を大事にすべき
の5つです。
先日、ある優良企業の独資設立後の運営準備会議に参加したところ、企業側が運営準備だけでコンサルタントの指導を受けて準備した事項が59項目もありました。このように、コンサルタントの指導を最大限に活用される企業様には感心させられました。やはり優良企業には、そうなるだけの理由がありました。