日本では税関問題は弁護士に任せるけれど
今回は、税関案件の処理について皆様と検討したいと思います。
中国で税関監査を受けた日系企業は今までにたくさんあります。みなさんの日本での経験からすると、税関監査の案件があった場合、弁護士の先生に任せることしか考えつきません。また、本社へ報告しても、弁護士に頼むようにとの指示があることがほとんどです。
ですが、結果から見ると、弁護士の先生に任せて、うまく解決にいたった例はあまりないようです。ある大手企業などは、弁護士を通じて税関を起訴しましたが、3年たってもまだ結論が出ていません。それどころか、さらに税関監査を受けることになり、より大きい事件となり、再度起訴しなければならなくなりました。
このような方法をとったために、膨大な弁護士費用がかかっているだけではなく、税関との関係が修復不可能な域にまで来ており、戻る道がいまだ見つかっていないようです。
法律だけでは済まない税関問題の本質を見る
一番起こりやすい税関問題は加工貿易企業の問題です。在庫バランスが合わない……これは企業内部管理の問題が主な原因ですが、税関の加工貿易監督管理システムにも不完全なところがあります。
税関監査を受けるときには、まず税関の現場調査への対応のほか、さまざまな資料を提供することが要求されます。ここでやり方を間違えると、問題が大きくなることがあります。例えば、現場調査への対応が適切ではなかった、資料の提供が税関の要求する期日よりも大幅に遅れてしまった、資料の提供ができなかった、税関に出した資料のコピーを残しておかなかったために、後日提供するための資料と内容を照合できなくなった、など……。
このように、税関監査の問題の大半は法律問題ではありません。対応の問題、加工貿易に対する認識の問題、社内管理の問題など、いずれにしても税関の法律に詳しいだけでは済まないでしょう。
税関問題で重要なのは人脈問題ではない
税関問題は法律問題とも言えますが、加工貿易とも関わっており、法律を執行する範囲のバラツキの幅がとても大きいのです。在庫はマイナスにしている、プラスにしているなど、事実認定に適応範囲の幅が広いため(ここでは、法律の詳しい解釈は字数の制限で省略いたします)、結果から見れば、何の処罰もなく通関手続きの補充だけで済ますことができたケースが数多くある一方、こじれて大きな事件にまでになってしまい、何百万元もの税金や罰金を払ったり、生産停止に追い込まれたりした企業もあります。
ここまでお読みになって、これは法律の問題ではなく、人脈の問題ではないか……とお考えになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一部の要因としてそれもあるかもしれませんが、それだけではありません。税関監査の結果とその事実の認定、税関との交渉など、一番重要なのは人脈ではありません。税関への説明資料、対応が重要です。この広い適応範囲のなかで、税関に「弊社は弁護士が付いています」と言ってしまうと、逆に税関も法律ばかりの話となり、厳しい方向に進められていくことになりかねません。
外部の専門家にも依頼し会社のリスクを最小化
中国で加工貿易のシステムが始まってから今までの20年の間に、税関の監督プロセス、ソフト、係員とも進化しています。昔によく言われた人脈の重要性も、今では古い話となってきています。もっと税関リスクを重視し、内部管理と情報収集の強化が必要です。
誰か一人が監査結果を左右する時代はもう終わりました。また、何かありましたら、恐れずに、社内の対応をしっかりしたうえで、外部の専門家にも対処してもらい、会社のリスクを最小化するのがベストです。
しかし、対応を任せる専門家は、弁護士の先生ではなく、やはり工場に詳しい税関専門家の方が良いでしょう。