今回の記事を書いているのは、2011年12月最後の日、日本の大晦日にあたる日です。2011年は、東日本大震災、タイの洪水、温州企業主夜逃げ事件、中国不動産バブル崩壊の兆しが見え、中国新幹線事故など……中国にとっても日本にとっても、決して平穏な一年ではありませんでした。この場をお借りして、読者の皆様、2011年本当にお疲れさまでございました。 今回は、最近相談の多い工場移転の税関関連について、検討したいと思います。
住所変更、工場移転
工場を新しい場所に移転する場合、既存の場所と新しい場所の行政管轄地域が違うと、手続きは複雑となります。企業と関係のある行政管轄機関の区分は、基本的に鎮、区╱県、市、省に分けられます。既存の場所と新しい場所が同じ鎮であれば簡単に済みますが、仮に省も違うとなると、大きな課題となります。 また、加工貿易企業であれば、所轄機関に「税関」が増えます。税関の組織も税関区に分けられ、例えば一つの市に複数以上の直属税関が存在する可能性もあります。その他、各市に直属税関の上級税関、いわゆる管轄税関も存在しています。もちろん、省には省レベルの税関もあります。 一般企業なら、移転場所を探す際に、ただのスペースの問題や賃貸契約問題なら、できれば同じ鎮、同じ直属税関にするのがベストです。鎮が違うと、直属税関が同じであっても、直属税務局が変わりますので、税務上の変更手続きは複雑となります。直属税関も変わる場合、大変煩雑な手続きになります。今回は字数の制限上、税関の手続きのみに関してご説明いたします。
同じ所属税関での移転
鎮が違っても、もしかしたら所属税関は同じかもしれません。この場合、設備・在庫資産、人員等を先に移転させて、その後に「経営住所変更」手続きを所在地の対外経済貿易合作部門(現在一部地域が商務部門と名称変更)、工商部門(現在一部の地域が市場管理監督局と名称変更)を順次に変更した後に、所属税関に住所変更手続きと同じように行なえば問題ありません。
違う所属税関での移転
Ⓐ加工貿易企業
同じ市において、鎮、区が違い、所属税関が違うことになる場合は、管轄税関が同じであるとしても、税関手続きが違います。手順は以下になります。①「経営住所変更」手続きを所在地の対外経済貿易合作部門(現在一部地域が商務部門と名称変更)②「経営住所変更」手続きを工商部門(現在一部の地域が市場管理監督局と名称変更)③国家税務局、地方税務局税務登録手続き(別途ご説明いたします)④税関での企業登録手続き、設備、材料手冊申請手続き⑤設備移管、転廠手続き⑥余剰材料転廠手続き⑦元所属税関で手冊核ショウ(クローズ)手続き税関手続きだけでも、半年以
上かかる可能性もあります。手冊クローズをするときにバランスが合わないことにより、税金発生の可能性が出てきます。
Ⓑ一般企業一般企業は加工貿易手冊を持っていないので、税関部分の変更手続きは前記1から4までの手続きとだいたい同じです。加工貿易企業は税務局の手続きと税関の手続きのどちらも難しいのに対して、一般企業は税務局の手続きだけが煩雑ですので、加工貿易企業に比べれば、少しは楽になります。
省をまたがる工場移転
省をまたがる工場移転(中国語=搬遷)の手続きをするには、法律上ではありますが、実務上ではあまりにも関わる政府機関が多く、また所要時間が長いため、意見調整は難しく、トラブルが生じる可能性が高いです。アドバイスとしては、新しい住所で「新会社設立」の手続きで設立し、徐々に生産移管できた後、旧場所を「閉鎖」という手続きをするのが得策です。