JIMO 華南地域における香港のサブ機能(2007)
中国華南地域において、外資系企業の進出形態には法人格がある三資企業と法人格がない来料加工廠があります。華南地域の三資企業は大部分が香港の会社を通して投資をしています。中でも来料加工廠は華南地域の特有の委託加工方式で、香港に現地法人を有する日系企業の大半がこの形態を採用しています。
香港に親企業を持つ華南地区日系企業の特徴
●ほとんどは輸出を主とし、中国内販を主とする企業は少数派。
●大半の企業が、「華南地域で製造し香港経由で販売」方式を採用している。
●親の香港現地法人は、部品の調達・金融機能・バッファー機能を果たす。
●中国国内での原材料の調達割合が高まりつつあり、基幹部品など高額の部品は中国外での調達が主流である。
●外貨決済には、東莞ではほとんど差額決済を採り入れ、深圳では差額決済と全額決済がそれぞれ半々。
●来料加工の実績がある企業の中国独資現法人への切替えが増加。
香港の物流が支える華南の加工貿易
香港の物流は、国際調達・配送・代理販売・中継それぞれの分野において、中国国内よりかなり発達しています。華南地域は香港に近隣するため、香港親会社は華南地域に進出した来料加工廠と子会社にタイムリーに全世界から部品調達をして配送し、製品の全世界販売に重要な役割を果たしています。
○海運では、香港には全世界トップのコンテナ港があります。約80社の国際コンテ華南地域における香港のサブ機能ナ運送会社から毎週400航路、世界各地の目的地500ヵ所に向けて、貨物を運搬。
○空運では、66社の国際航空会社より毎週約3800フライトの定期便があり、香港より世界各地の目的地130ヵ所に運航。
○陸運では、毎日2万7400台(回)のトラックが香港と珠江デルタを往復。華南地域に進出している進料加工にしても、来料加工にしても、免税扱いを受けるには、手冊と呼ばれる台帳に、会社の生産能力に応じた輸出入枠が登録されることが必要となります。手冊の記入スペースの制限から、生産している数百、数千アイテムの部品を十数種類にまとめたり、個数ではなく重量で届けて申告したりする必要がありました。香港はこのような手冊による輸出入制限の調整とチェック機能を果たしています。加工貿易に際して香港が果たす具体的なチェック・調整機能は以下にあげられます。
○輸出・輸入枠に合わせた調整香港では部品調達と配送機能を果たしながら、通関手冊の輸出・輸入枠に合せ、輸出入量の調整がタイムリーに対応できる。
○ロット調整、リードタイム短縮加工貿易会社は手冊の輸入枠制限のため、リードタイム短縮、安全在庫、予測誤差のカバー、最小梱包単位などに対応できない。香港では倉庫のバッファー機能を果たす。
○通関効率アップ各サプライヤーと顧客の様々な品物をまとめて通関すると、経費削減と手続きの簡素化につながる。
○転廠の価格調整及び支払調整華南地域は世界の工場と呼ばれ、電子製品、衣類などの部品メーカーが集中しています。同じ免税取扱の会社間は品物の運搬でも輸出入と見なされる場合があります。。これがいわゆる「転廠」ですが、移転価格が発生する会社においては、通関価格と取引価格がかけはなれているため、転廠に関わる上流会社と下流会社の通関価格にバラツキが出てしまいます。通関では同一金額でないと転廠できないため、格差は自社で消化しなければなりません。香港はこうした転廠による格差をカバーすることができます。
香港の金融機能と外貨決済
次に香港の金融システムを利用するメリットを解説します。アジアの金融センターである香港では融資、および香港銀行における信用状の受取と発行が容易です。また、銀行サービス及び外貨規制がないため、ほとんどの銀行が香港に支店を開設しています。外貨に対する規制がなく、資金は自由に両替でき、流動するのです。外貨決済についてはどのようなメリットがあげられるでしょうか。華南地域の加工貿易会社は外貨決済(買掛金の外貨支払い、売掛金の外貨受取)の際も、中国国内では人民元しか利用できません。そのため、中国会社で膨大な流動資金を持ちたがらず、両替より発生する為替差損、中国銀行との取引より発生する手数料を考慮して、差額決済を取入れる場合がほとんどです。通関手冊を利用して、部材と製品の合体申請、通関申告をするにあたり、実際の取引金額と合わなくなったり、手冊の増値率の制限と外貨決済の決済率の制限、転廠価格の影響より、華南地域の加工貿易会社の売掛と買掛が実質の取引状態からかけ離れてしまう場合があります。香港は上記に起因した差異の調整機能を果します。
次回は、タックスヘイブンの活用、移転価格の中継機能及び中国の外貨管制、税務上の不手際等の香港での処理について紹介する予定