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華南マンスリー6月号 食堂の管理

2018-02-26
どこでも難しい食堂管理
 
 華南日系企業の工場のほとんどが工場に食堂を設けています。食堂の管理方式は大きく2種類あり、1つは自社管理、もう1つは専門管理会社に委託する方式です。
 10年前に聞いた話ですが、ある台湾系の大きな企業では、毎日1万人以上の社員が食堂で食事をしていました。そして、その企業の総務担当者は、毎月自分の懐に30万元ほど入れていました。皆様のご想像どおり、この企業の食堂の味は美味しくなく、社員から不満の声が上がり、その担当者は1年後に他の部署に移動させられました。やはり、食堂の管理は難しく、台湾系企業であっても同じです。
 ところが、3年前に私は故原田則夫氏が管理する工場の食堂で食事をしたことがあるのですが、そこが美味しくて安いのです。毎日1人7元で専門会社に任せていたようです。もちろん任せてからすぐに美味しくなったわけではなく、アウトソーシングした後も、委託先といろいろ工夫をしたようです。
 ただし、このようにキチンと管理できているところは非常に少なく、管理者から「難しい」というため息をよく聞きます。逆に、あまり気にしてない会社もあります。今回は簡単ですが、食堂の管理について触れたいと思います。
 
 
 
食費の標準設定に問題
 
 自社が食堂を管理しても、基本的には1人1日いくらといった標準が設定してあります。ここでよく問題が発生します。ある企業は1人1日9元という標準を設定していました。今年、その会社の総務部長が変わり、新総務部長が就任後に、食堂のコスト管理について過去の実績を調べたそうです。
 食堂に使った食材、調味料、植物油、燃料油、消耗品、掃除用品等をトータルで計算したら、各半年間の月平均金額は1人1日12元と、会社の標準を大きく超えていました。しかも、この結果には会社で食べてなかった人数(休暇中、外食、出張)が含まれていません。なぜこのようなことが起こったのでしょうか。それは、会社として月末に集計もせず、食堂管理者の自由な判断・請求となっていたからです。
 また別の企業では、専門業者に任せ、標準も設定していました。しかし契約書では、業者側は1人いくらの料金を受け取る以外に、食堂で使う食材、調味料、植物油、燃料油、掃除用品等の費用は別途請求できるようになっていました。このような契約は標準設定がないのと同じです。そのため、その企業は委託業者からめちゃくちゃな請求をされ、有り得ないスピードで食材等が消耗されていたことが、その企業の調査で発覚しました。
 
 
 
人数管理にも問題が
 
 自社管理にしても専門業者に委託するにしても、食事をした人数の管理が必要です。あるお客様の工場で起こった話ですが、食堂が工場エリア内ではなく隣の敷地にあり、委託業者が報告してくる食事人数が実際の社員数を超えることがありました。調べたところ、社外の人間が食堂で食べていたことが判明。この企業では社員証で人数管理をしていましたが、社外の人間は、以前働いていた社員の社員証を用いたり、不正に社員証を作成したりしていたようです。
 自社管理の場合、このような事態すら把握していない恐れもあります。出勤人数は毎日変わります。出勤しても食堂で食べない人もいます。食事代はすべて会社負担とする会社では、このような部分の管理が充分ではない可能性があります。食べる人数が少なくなれば経費も少なく会社に請求することになり、業者さんや食堂の管理者は責任を持って確認する気持ちが薄くなるからです。
 
 
 
労働者離れを防ぐために
 
 まず、食費の標準の内容は明確にしましょう。燃料油は含まれるか、掃除用品は含まれるか、社員給料は含まれるか。業者に委託するなら、消耗品等をすべて含めた条件で契約をしないと、委託する意味がありません。また、自社管理にしても外部委託にしても、分析管理は非常に大切です。あとは、原田氏の工場で実施していたように、食べた人の感想を透明かつスピーディに公開するのが得策です。
 最近は労働者離れを防ぐため、企業では食堂の味に関心が集まっています。社員たちにもっと美味しく食事を提供し、満足してもらうための努力をしましょう。