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Whenever広東5月号 労務トラブル —労働者権利の濫用-

2018-02-28
日中政治問題、中国国内の賃金上昇、経済不況などの問題が原因で、中国に進出した日系企業は、『チャイナ・プラスワン』戦略が本格化し始めたようである。特に最近では中国進出した日系企業が撤退や生産縮小の動きを見せている。一方、『労働契約法』の施行以来、インターネットの普及等により情報量が増大し、様々な情報収集が容易になったことから、昨今では労働者の権利意識が高まっている。
 
皆様のご存知通り、事業撤退・リストラ・雇用側都合で労働契約を解除する際には、従業員に経済補償金を支払わなければならないが、労働者の権利意識の高まりに伴い、権利が濫用化し、法定以上のことを要求されることもよく見られる。特に、中国から撤退する場合はより深刻化しており、多くの企業は被害を受けているようである。
 
【事例】
A社は、中国から撤退することを決定した、撤退する6ヶ月前に経済補償金の支払方法を公告という形で従業員に告知した。周辺企業は、撤退する際に法定以上の経済補償金を支払った実績があったので、従業員達も法定以上の補償金の支払いをA社に要請した。もし同意しなければ、ストライキを行うとA社の管理層に脅迫した。さらに、従業員は経済補償金の上に、『残業代支給不足』などを申し出て、少しでも多くの補償金を得ようとした。納期厳守を重視しているA社は、止むを得なく従業員に妥協し、当初の計画より多額な撤退費用がかかった。
 
【対策】
 労働者の権利濫用行為については、企業自ら解決することはかなり難しく、労働部門などが政府と連携することが必要であると考えられている。ちなみに、企業側からいくら説明しても、従業員が騙されていると認識し納得しないので、政府部署(労働局など)の力を借りて、経済補償金の支払基準を説明する方がよい。ストライキを行う前兆があった場合、早急に労働部門に報告し、政府のもとで労使協議を行うよう協力を求める。
 なお、中国から撤退する際に、従業員への発表するタイミングも重要となる。出荷への影響を最小限に抑えるため、生産が完了する1ヶ月前に中間層に確認し、中間層の意思を把握した上、従業員全員に発表した方が良い。