従来では、華南地域に於いて殆どの来料加工廠は香港会社を通して来料加工形態で運営を行っていましたが、現状では独資化がかなり進んでおり、来料加工廠は現地法人に変わりましたので、香港会社の位置付けもそれに伴い変化しました。
独資化前は、香港会社が製造業としての位置づけでしたが、独資化後は製品の仕入・販売を主とする貿易業か、物流手配のみの物流業としての位置づけに変わり、業務内容が従来より大幅に簡単になりました。
よって、香港会社の業務内容見直し・組織再編(独資会社への吸収)・コスト削減(賃貸料と人件費の削減効果が大きい)を全面的の見直しが図られることになり、具体的には香港業務の縮小、独資法人への業務移管、香港会社のペーパーカンパニー化などを検討される会社がどんどん増加しています。
香港会社の業務移管に対して、下記の点をご留意下さい。
■会社秘書と登録住所が不可欠
香港では会社秘書役の任命が義務付けられております。主な任務は香港会社法で定められた様々な書類を会社のために準備し、会社登記所に提出し、これらを保管することです。且つ、毎年の年次報告書提出や取締役・住所・資本金等の登記事項の変更、各種議事録作成にも関ってきます。よって、業務を独資現法に移管し、香港会社をペーパーカンパニー化するとしても、秘書を雇用する必要があります。
上述した登録住所は香港会社の法定及び運営住所であり、政府からの郵便は全てこの住所宛に送られます。よって、登録住所も不可欠です。
香港では登録住所と秘書サービスを両方提供する会社があり、費用も年間で数千元しかかかりません。
■ 会計・税務業務の移管
記帳処理につき、独資化前は製造業ですので、原価計算(製造原価の計算:製品1個あたりの生産コスト計算)、在庫管理(原材料、仕掛品、製品、消耗品、スクラップ、不良品の区別で、入庫・出庫・払出しなど)、資金予算管理、各種費用清算管理、資産管理(固定資産、棚卸資産)、資金管理(生産経営活動の中で発生する各種債権債務には、受取手形、売掛金・買掛金、その他未収金・未払金、前払金・延払金など)などが必要になり、複雑な会計処理でしたが、独資化後は貿易業に変更することにより、原価計算が簡単になり、材料の仕入と製品の販売も、在庫管理がかなり簡単になり、資金管理(製造関係の資金が全部必要なくなる)も楽になるので、会計業務を独資現法に移管するのは現実的となります。
税務申告につき、香港の決算期は日本・中国と違って、日本なら3月度で、中国内陸なら12月度を決算月としていますが、香港では決算月が自由に決められるので、毎年決まった時期(決算月により税務申告期限が変る)に申告納税すれば良いです。
独資化後は、香港雇用者がいれば、雇用者申告表(個人所得税)の申告が必要ですが、香港雇用者がいなければ、決算後、利得税の申告のみとなり、外部に税務委託するのも費用は約千元しかかからないので、外部委託することを提案します。